京極夏彦作品セット 日本映画

色々疑問点が多い映画であることは確かでしょう。例えばセリフが聞き取り辛い録音とか。ロケーション中心の撮影なので、ノイズは有るわけです。通常通りそれを排除するか、そのライブ感で一貫したムードを保つかと言う選択で、後者を選んでいるとは思われます。平岳大の葬式のシーンでダンサーを画面の中心にフューチャーするほど重要な存在とは思われないと言う事もあります。「コクソン」のシャーマンであればストーリーの展開で重要性が高いですが、そうした重要性は感じられません。「燃えよ剣」等でもあまり必然性の感じられないダンスシーンが有りましたが、この作品の方がよりその比重は重いと思えるのです。監督のフィロソフィーとしてその方法が有るのか、もしかしたらジャニーズ的なものへの反発が有るのかも。酒向芳演じる犯人の造形、演技もこれでいいのかなと感じました。ちょっと作為性と言うか、戯画化が強すぎないかなと。アニメ的造形だなと。本来の木村拓哉なら「おかしいでしょ」ぐらい言う感じですが、今回はかなりシリアスに入り込んでいて、頭が冷めないと言う事なのかも。アニメ的ゆえに、どちらかと言うと二宮和也の方が嚙み合わせがいいとも言えます。やはり足元を映すステップの感じが、木村でも二宮でもないと言う点が引っ掛かります。木村拓哉は法律の引く線を越えて正義を掴もうとする男を生真面目に演じています。胡弓を引く奥さんが工藤静香を連想させて笑ってしまいますが、中盤以降存在感が薄くなり、二宮に主役を交代する感じが有ります。二宮は一人で画面が持つタイプでは無いので、監督も画面造りに苦心している様な、吉高由里子と頭を左右にして横たわるカットや、八嶋智人の事務所やその奥さんの設定とかもアニメ的な発想ではないかと。ダンスの扱いを含め押井守的センスを感じる訳です。ただやっぱり取り調べの「パッ」とか最後の「ウォー」とか、意識的表現としても本当に人に響くものはないような気がします。タイトルバックの建築物がシンメトリーになっているのはちょっと期待させるのですが、登場人物が重ねられるセンスがしょぼい(コンテンポラリーでない)と。音楽のセンスも、最後のシーンが森の中の別荘で終わるのもコンテンポラリーでない気がします。ポスト資本主義世界の周回遅れとなりつつある日本で、保守層が脱ルール志向になった時、リベラル層のジレンマを表現している様でそれもまたしょぼい。安倍政権期後半のムードとは言え、同時に東宝製作のムードでもあると。ストーリーに権力批判の意図が有っても、製作体制に多数派志向や権力依存が潜んでいるとも思われる訳です。木村が体制の枠組みを飛び出そうとして、二宮が諫めるとは、二宮に手を汚させないと言う意図が有るのが見て取れ、現実との結びつきはストーリー自体よりも強いと。木村の見る夢は体験的なものでは無く、他者の記憶の想起の中で苦しんでいます。いやこれは…。

2023/06/03 22:28

沖野と橘の恋愛が無ければ空気穴が無くて見終わった後は息苦しいと思う。おじさま俳優がみんな怪演というのもあるけど、そもそも原作がどうなんだろうね

2023/06/03 22:00

原作は未読。ネタバレ含むレビューです。原作が小説と知っていたので、2時間に収めるために色々詰め込んでいると思って鑑賞。登場人物のそれぞれのちょっとしたキーワードを盛り込んだ発言や回想で人物の背景を描写。ダンス表現や葬儀部分は監督の表現したい映像なのかなと解釈。邦画的で良い世界感。私自身は好きだけれど、慣れていないとストーリーから引き戻されるかもしれない。最上は安保闘争や学生運動絡みの背景を持った人物を映画で現代版にアレンジしたのかなと思ってみていたけれど、原作の発行年を確認すると最近だったのでほぼこのままなのかなと思った。最上と沖野以外のちょい役のキャラクターも味があってよかった。最上が、松倉が法で裁かれ罰を受けることにこだわって取る選択がとてもよかった。前半はとてもよくまとまっていたけれど、終盤はまとまりきってなかったかなとは思ったけれど、概ね満足できる面白い話だった。原作とどのくらい違うのかが気になり、あらすじを確認したけれど、原作もとても面白そうだった。後半の描写に前半ほどのまとまりを感じなかったのは原作と変えている部分が影響しているのかもしれない。小説としての結末は小説だから味わえる面白い展開だと思った。映画にするならこの結末で良いと思う。

2023/06/03 18:43

人間って100％のウソをつく人もいないし、100％の真実をしゃべる人もいない。それと同じで100％の正義なんてどこにもない・・・。終盤で吉高由里子がつぶやくセリフですが、これが全てを語っています。キムタクもニノも豪華くせ者俳優陣に助けられてスター独特の存在感をかなり消してる方だと思いますから、普通の映画として楽しめると思います。ただ、セリフがセリフっぽくならないようにするための演出なのか、聞き取りづらいシーンが多いのでー１。日本映画ですけど日本語字幕付きで見ることをおススメします。

2023/06/03 18:15

前提として述べますが、私は主役2人のファンではありません、、が、キムタクもニノも基本的には演技自体は決して悪くなかったと思います。が、冒頭の松重さんとの対決シーンでは、ニノのまるでコントのような軽い話し方が気になりました。セリフ自体も、無駄に芝居がかった現実味のない、違和感のある言い回しが目立ったように感じました。ただその後の容疑者との取り調べシーンでは一転、圧巻の演技で一気に引き込まれました。セリフ自体は相変わらずの違和感でしたが。本作のセリフ自体の不自然さはあらゆるところで目立ち、違和感を禁じ得なかったです。他のレビュアーの方も書いていましたが、新人検察官の飲み会での会話やキムタクの同僚？との会話のセリフの白々しさにも一気に冷めました。長セリフ故の俳優の早口加減、聞き取りづらさについても他のレビュアーと同様、私も何度も巻き戻しをしながら見る羽目になりました。何より、この映画で1番いらないと思ったのが、、随所に出てくる謎の演出。インパール作戦であるとか、白骨街道、果ては突然の謎のテンポラリーダンス集団の登場や、終盤では奇抜な格好の弁護士の奥さんが出てきたり…非現実的な設定や歴史的、政治的なアイテムが突然何度も出てきて、、本筋と関わらないような演出があまりに多く見ていて？？になったり、失笑してしまったり…混乱させられる場面が多く、疲れました。どうもこれらは原作では無かった部分が多く、監督=脚本家によって加えられた物のようなので、この作品においていえば、あまりこねくりまわさず、冤罪、検察界の問題、悪・・という主テーマに絞っていた方が視聴者に訴え、役者の良さが素直に活かされた作品になったのではないかと思う。映画における監督や演出家の大事さがとてもわかった作品でした。

2023/06/03 17:24

最後眠くなって寝てしまったが、いい終わり方でした。

2023/06/03 13:23